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2010.06.10

立松和平●遊行日記

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今度の課外授業のテーマは「いのちを考えつづけよう」ということだ。私は子供たちと木の根元に寝転び、天を突いて伸びている新緑の梢を見上げた。〔…〕

樹齢八百年の欅である。根から根へと飛んで、私は子供の頃に鬼ごっこをしたものだ。私は西原小学校五年二組の子供たちに手をつないでまわりを取り囲むようにいう。十二人分が必要だった。〔…〕

「さあ、蟻んこになって見よう。みんな、この場に寝そべるんだ」〔…〕

「うわあ、でっかい」

「踏み潰されるう」

大木が巨人のように見え、子供たちは口々に声を上げる。〔…〕私は寝そべったまま大声で話した。

「欅の木が人間だとしたら、自分たちは蟻んこだよな。蟻にしてみたら、こうやって人間ががーんがーんと歩いてるんだよ。それも、知らないうちにいきなり空から大足が降ってきて、踏み潰されるんだ。恐ろしいぞ。蟻から見れば、世の中はこのようにできてるんだぞ」

●遊行日記|立松和平|勉誠出版|ISBN9784585290001201003月|評=○

<キャッチコピー>

「何も心配ないからね。眠りたいだけ眠りな。何も心配ないから」。病いの床にある母のこと、仏の教え、自然の叡知、そして多くの友のこと……。生命の重み、人の救い。急逝した著者が残した最後のメッセージ。

<memo>

中国、バリ島、知床、山口・見島と東奔西走の日々、故郷・宇都宮で母校の小学生相手の授業ロケ中に母が倒れる。著者急逝直後に刊行の書。

立松和平■ 南極で考えたこと

立松和平●世紀末通りの人びと

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