竹内明●時効捜査――警察庁長官狙撃事件の深層
検察の反応は冷淡だった。東京地検公安部はまず、警視庁サイドにこう言い渡した。 「小島実行犯説か中村実行犯説のどちらなのか、まず警視庁としての意思統一を図ってほしい。ばらばらに交渉しにくるのは御免蒙りたい。報告や相談は警視庁公安部に窓口を一本化する形で、地検に相談しに来てほしい」 刑事・公安の内部対立に検察は付き合うつもりはない。 一体の組織としての結論の証拠を評価したうえで、検察としての最終判断を下す。結論を検察に持ってくるのは、特捜本部のモトダチである警視庁公安部であるべきである――これが検察側のメッセージであった。 |
●時効捜査――警察庁長官狙撃事件の深層|竹内明|講談社ISBN:9784062161701|2010年04月
|評=○
<キャッチコピー>
国松長官銃撃。ついに明かされる真相決定版。多くの捜査員たちの「無念」が、この1冊に結実した。時効を迎えた長官狙撃事件の詳細な内幕。そして、残された銃弾痕から浮かび上がる、衝撃の真相―。前代未聞の事件は未解決のままついに時効を迎えた。屈辱の日本警察、内幕ドキュメント。
<memo>
警視庁公安部は時効の翌日、またしても捜査機関としては前代未聞の行動に出た。「警察庁長官狙撃事件の捜査結果概要」なる文書を警視庁のウェブサイト上に掲載したのである。その内容は、元警視庁巡査長らオウム真理教の信者たちが限りなく犯人である疑いが強いと状況証拠を並べて主張するもので、登場人物は麻原彰晃含めて9名。〔…〕デュープロセス(法手続き)に乗せることができなかった「疑惑レベル」のものを、法治国家の捜査機関がウェブサイトで公表したことに、私は背筋が寒くなった。(あとがき)
警察庁長官狙撃事件のノンフィクション3冊 | ||
1998.02三一書房/2002.10講談社α文庫 | ||
オウム信者の現職警察官の犯罪を、警察庁対警視庁、公安部対刑事部というどろどろした対立を中心に無能な幹部像を描く。執筆者は複数?哲学的文体が読み辛い章も。 | ||
2010.03|新潮社 | ||
犯人は、かつて現金輸送車襲撃事件を起こした男。オウムに破壊される国を憂い、警察庁・警視庁を奮起させるのが動機であったと告白する。詩を書く不思議な日本人である。 | ||
竹内明●時効捜査――警察庁長官狙撃事件の深層 | ||
2010.04|講談社 | ||
お粗末な捜査ミスの繰り返し、それを隠蔽するのにエネルギーを注ぐ警視庁、警察庁、検察庁の三つ巴の軋轢を描き、オウム犯罪に肉薄する。犯人は北朝鮮ルートを暗示する。 |
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