マイケル・ディルダ/高橋知子・訳●本から引き出された本――引用で綴る、読書と人生の交錯
一流の小説。求愛と許されぬ恋は、現代の小説が扱う二大テーマである。 名著とされるイギリス小説の多くは、結婚という結末を迎える。〔…〕 だが、ヨーロッパ大陸が生んだ傑作のほとんどは、失恋と死で幕を閉じる。19世紀、不義の恋を描いた物語の中心に据えられたのは女性だ。〔…〕19世紀が終わるころには、英語圏の小説家も悲劇のヒロインを描くようになっていた。〔…〕 しかし20世紀前半、物語の主軸は男性へ、それも行き場のない心を抱えていたり、背徳の恋に身をやつしたり、耐えがたい嫉妬心にとりつかれていたりする男性へと移る。〔…〕 ほぼすべてに共通する要素は、切望――幻のようで、ほとんど手にすることができない幸福への切望である。 |
●本から引き出された本――引用で綴る、読書と人生の交錯|マイケル・ディルダ/高橋知子・訳|早川書房|ISBN:9784152091116|2010年02月|評=○
<キャッチコピー>
「ワシントンポスト」紙で長年書評欄を担当し、ピュリッツァー賞を受賞した練達の書評家が、50年の読書人生のなかで出会った珠玉の文章をちりばめ、書をひもとくことがいかによく生きることにつながるかを綴る。
<memo>
本書「恋愛の書」の章に、
――女優のパトリック・キャンベル夫人が、かつてこう書いている。「長椅子での大騒ぎのあとにやって来るのは、ダブルベッドでの深い深い安らぎよ」
という一節がある。意味不明だったが、たまたま同時期に読んだ丸谷才一『人間的なアルファベット』にこんな一節。これならよく分かる。
――新聞記者 結婚なさっての感想は?
女優 長椅子の上で大急ぎでしなければならなかったことを、ダブル・ベッドの上でゆっくりできるようになりました。
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