谷川葉●警察が狙撃された日
国松警察庁長官狙撃の犯人は警 視庁警察官(オーム信者)。 既に某施設に長期間監禁して取り 調べた結果、犯行を自供している。 しかし、警視庁と警察庁最高幹部 の命令により捜査は凍結され、隠 蔽されている。警察官は犯罪を捜 査し、真実を糾明すべきもの。 (内容、字詰めとも原文のまま)〔…〕 首都の治安を守るべき警察官が、その職務を指揮する最高幹部を狙撃した犯人だったとすれば、警視庁にとってこれほど悲劇的で自己矛盾的な結末はないだろうと思われた。 大概の社が投書を黙殺するなかで、毎日、共同の二社だけは、公安部幹部の引きつった一瞬の表情を見逃さなかった。〔…〕 毎日では、警視庁クラブだけでなく、社会部全体を挙げた総力取材態勢が敷かれた。〔…〕 「そんな事実は絶対にありません」「馬鹿な話だ」。 公安部長・桜井勝、公安二課長・岩田義三らは、担当記者やキャップたちの度重なる厳しい問い詰めにも、かたくなな否定を続けた。 駄目押しのハガキが投函されたのは、そんなさなかだった。 |
●警察が狙撃された日|谷川葉|三一書房/1998年02月|講談社α文庫/2002年10月|評=○
<キャッチコピー>
国松孝次警察庁長官を3発の銃弾が貫いた。犯行を自供したのはオウム真理教信者の現職警察官だった。ところが、狙撃事件の立件は見送られ、被疑者は「放免」されてしまう。犯人はなぜ逮捕されないのか。誰も書けなかった警察庁・警視庁の暗部を暴く衝撃の問題作。現職・社会部記者が事件の真相にはじめて迫る。
<memo>
われわれはオウム真理教在家信者の現職警察官という存在、そして彼の供述をめぐる一連の捜査経過を追いながら、長官狙撃事件の〈象徴的な意味〉の強度に屈し、警察組織内部に元来から根深く存在する秘密と欲望と倣慢に耽溺してしまった、あまりにも異様な警察官僚の生態をみてきた。仮にそこに意図的に捜査を遅らせるといった悪意がなかったにせよ、警察組織全体のためという道理があったにせよ、犯罪捜査機関の根幹に関して、強い疑念と深い不信を抱かざるをえない事態が、かくも複数の事例とともに存在したことは、警視庁にとってそれはあまりに致命的である。(本書)
警察庁長官狙撃事件のノンフィクション3冊 |
谷川葉●警察が狙撃された日 |
1998.02三一書房/2002.10講談社α文庫 |
オウム信者の現職警察官の犯罪を、警察庁対警視庁、公安部対刑事部というどろどろした対立を中心に無能な幹部像を描く。執筆者は複数?哲学的文体が読み辛い章も。 |
鹿島圭介●警察庁長官を撃った男 |
2010.03|新潮社 |
犯人は、かつて現金輸送車襲撃事件を起こした男。オウムに破壊される国を憂い、警察庁・警視庁を奮起させるのが動機であったと告白する。詩を書く不思議な日本人である。 |
竹内明●時効捜査――警察庁長官狙撃事件の深層 |
2010.04|講談社 |
お粗末な捜査ミスの繰り返し、それを隠蔽するのにエネルギーを注ぐ警視庁、警察庁、検察庁の三つ巴の軋轢を描き、オウム犯罪に肉薄する。犯人は北朝鮮ルートを暗示する。 |
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