山田風太郎/鹿島茂●鹿島茂が語る山田風太郎
読者にむずかしいと感じさせるようなところは一つもありません。あざとい技巧を意識させるような部分は一か所もありません。それどころか、自分が「別解」という大ウソをつくっているということすらも読者に気づかせません。 ですから、読者は、「ああ、面白かった」の一言で読みおわるのですが、その感想には「だまされて楽しかった」の言外のニュアンスが入っています。 そして、それこそが山田風太郎の最も正しい読み方なのです。 技巧(マニエリスム) のかぎり、贅沢のかぎりを尽くしてつくられた単純素朴な外観の書院造り、山田風太郎の小説の味わいはこれに似ています。 |
●鹿島茂が語る山田風太郎―― 私のこだわり人物伝|山田風太郎/鹿島茂|角川書店|ISBN:9784043616022|2010年05月|文庫|評=△
<キャッチコピー>
「大学院生の頃、日本の現代小説にほとんど興味を失った私が唯一読むことができたのが風太郎だった」と語る鹿島茂が、小説という大ウソで読者を魅了した風太郎の真髄に迫る。
<memo>
全体の1/3が「NHK私のこだわり人物伝」収録の「山田風太郎~大ウソが語る「真実」」を改稿したもの。残り2/3は風太郎の短編「東京南町奉行」「伝馬町から今晩は」。凋落の一途をたどる角川文庫を象徴するような詐欺的本づくり。
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