小林信彦●森繁さんの長い影――本音を申せば
森繁久弥さんの死が大きい。山田宏一氏が編集した「銀幕の天才 森繁久弥」という写真集(ワイズ出版)があるが、このタイトルは正しくぴったりである。 森繁さんの訃報はNHKによって、〈「社長」シリーズと「屋根の上のヴァイオリン弾き」の役者の死〉として報じられた。
これだけで、もう故人を知る人がいなくなっていることがわかる。〔…〕 昭和25年を一つの折り目とすれば、クライマックスは昭和30年にきた。 「夫婦善哉」のグータラ男、「警察日記」の人情警官という正反対の役で、観客をあっと言わせたのである。 特に関西の芸達者に混っての「夫婦善哉」では、北野中学出身ならではの大阪弁のうまさで、もはやコメディアンではないことを強く印象づけた。 この年の主演映画は18本。いわゆる「社長」シリーズは、翌年から始まるのである。 ――「マスコミが語らない森繁久弥像 1」 |
●森繁さんの長い影――本音を申せば|小林信彦|文藝春秋|ISBN:9784163725505|2010年05月|評=○
<キャッチコピー>
時代を観察し続ける著者のエッセイ第12弾。政権交代や芸能界、映画の薀蓄から、敗戦の記憶、面白い本、新型インフルエンザまで。
<memo>
週刊文春連載「本音を申せば」2009年版。年間を通してのテーマがないので、タイトルに無理がでて羊頭狗肉に。
| 固定リンク
コメント