尾形明子/長谷川啓:編●老いの愉楽――「老人文学」の魅力
これまで老年の考察といえば、老いへの恐怖・抵抗・不安といった〈老醜〉の側面が語られがちだった。確かにそれは、老いの大きな側面には違いない。だが、老いはそれだけにはとどまらない。 少なくとも老年は、肉体の老衰に反比例して、人生を長く生き経験しただけ、蓄積豊かなゆとりある境地への到達、人生の黄金時代といえるのではなかろうか。 現実の第一線から遠ざかるにつれ、既成の価値観や制度を逸脱できる自在な精神・思考を獲得できる時間ともいいかえることができよう。 〈惚け〉への階段にしても、夢と現実の境界を希薄にし、子供の空想世界に帰れる、ある意味でもっとも自由な、 放恣なほど自由な創造空間に耽溺でき、老いの過激性として考え直す必要があるかと思われる。 |
●老いの愉楽――「老人文学」の魅力|尾形明子/長谷川啓:編|東京堂出版|ISBN:9784490206463|2008年09月|評=△
<キャッチコピー>
日本の近現代文学を老いの視点から読み解く。シニア世代に発信するラジカルな一冊。瀬戸内寂聴/田辺聖子/大庭みな子/五木寛之/黒井千次/古井由吉/テーマ別“老い”のブックガイド。
<memo>
老いという視点から16人の作家の作品を読むのだが、著名な作品ばかりで今さら新鮮さもない。
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