山川静夫●大向うの人々―― 歌舞伎座三階人情ばなし
私自身も学生時代には、若気のいたりで随分無茶な掛声を掛けた。 仲間の大向うが、左團次に「高島屋」と掛けたので、間髪をいれず「今日は三越」とやったことがある。 その日は三越デパートの招待日だったから、場内は大爆笑であった。 『身替座禅』で勘三郎の山蔭右京が、「花子のもとへ、まいりましょまいりましょ」と、嬉しそぅに彼女のところへ出かける花道で、「イッテラッシャイ」とやり、悦にいったこともある。 ある時、松緑の右京にも「イッテラッシャイ」を掛けたら、あとで、 「あなたもいい年をして酔狂な……」 と、松緑にやさしくにらまれた。 |
●大向うの人々―― 歌舞伎座三階人情ばなし|山川静夫|講談社|ISBN:9784062156363|2009年09月|評=○
<キャッチコピー>
「中村屋ァ~!」「まってました!」歌舞伎で芝居の途中に役者に向かって掛けられる絶妙な「掛声」は、「大向う」と呼ばれる歌舞伎通の人たちによるもの。学生時代に「大向うの会」に入会し、現在に至るまで活動歴56年の著者・山川静夫。その青春時代、そして大向う、昭和の名優たちとの交流。
<memo>
中村勘三郎の「巷談宵宮雨」で著者は声色を使って早変わりの一役を買ったり、掛声を上げたときに外国人からいぶかしい表情で振り向かれ「サウンド・エフェクト(効果音)」と説明したり、といったエピソードも。上掲の「高島屋」は言うまでもなく左團次の屋号。
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