春日太一●天才 勝新太郎
特に勝を怒らせたのが、「語り過ぎる脚本」、つまり、ストーリーを分かりやすく伝えるためにセリフで状況を説明させる「トゥーマッチ」な脚本だった。勝は、そうした脚本を目にすると、容赦なく投げ捨てた。
「ストーリーを役者の口で説明させるな。役者は本屋の使いじゃない!」 勝の高い理想を前に、多くの脚本家の手が詰まり、逃げだしていった。〔…〕 脚本は勝の手によって徹底的に直されていった。勝が口でアイディアを語ると、それはいつの間にか脚本の形になっていた。そのアイディアは、日常のどの瞬間に生まれるか分からない。だから周囲の人間はいつもテープレコーダーを用意していた。 それを書き起こしたものが台本になり、スタッフに配られる。さらにそれを現場の即興で換骨奪胎、当初とは全く違う芝居や人物像が出来上がる。 |
●天才 勝新太郎|春日太一|文藝春秋|ISBN:9784166607358|2010年01月|新書|評=○
<キャッチコピー>
「座頭市」と豪快な勝新伝説で知られる勝新太郎。本書は映画製作者としての勝とその凄まじい現場をスタッフの証言を元に再現し、繊細すぎる実像を浮き彫りにする。純粋さが加速させる狂気のノンフィクション。
<memo>
TVの「座頭市」シリーズは、制作・脚本・監督・主演のすべてが勝の完全ワンマン方式だった。「降りてきた!神が降りてきたぞ!よし、回すぞ!回せ!回せ」。脚本無しの撮影だったという。
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