丸谷才一/湯川豊●文学のレッスン
――ところで、吉田健一さんなんかは、やっぱり生活のなかで詩を享受していたんでしょうか。 吉田さんは、一杯飲んでるとき、丸谷さん、あなたの好きな詩はどんな詩ですか、みたいなことをいう。 僕が英語の詩で覚えているのを数行、16世紀のトマス・ナッシュの詩かなんかをいうと、ああといって、くちゅくちゅと口のなかで繰り返す。そして、ああきれいだな、とかいって喜ぶ。 カラスミとかウニを食べるような感じなんですよ。詩が酒の肴になるのね。 僕はなるほど詩というものはこんなふうにして楽しむものか、と思いました。 |
●文学のレッスン|丸谷才一/きき手・湯川豊|新潮社|ISBN:9784103206088|2010年05月|評=○
<キャッチコピー>
面白くて、ちょっと不穏な丸谷才一「決定版文学講義」! 小説からエッセイ、詩、批評、伝記、歴史、戯曲まで。古今東西の文学をめぐる、目からウロコの話が満載。
<memo>
評論家・湯川豊のあとがき。「丸谷さんは、古代から現代にいたるまでの文学の姿をたんに手際よく整理してみせたのではない。ここで展開された論議は、つねに現代文学の先端的位置からなされているのである」。
| 固定リンク
コメント