原武史:編●「知」の現場から
原 雅子妃はいっそ海外にしばらく滞在したほうがいいんじゃないかと言いましたが、それはあくまでも雅子妃の病気の回復を第一に優先させるがゆえの選択肢として申しあげました。 でも、この間題がやっかいなのは、実はそれをまったく逆の立場から「そういうふうにすべきだ」と言うことも可能なわけです。 「とにかく今の皇太子夫妻には一刻も早く退場してもらわなきゃいけない」、「現天皇の次は秋篠宮に継がせるべきだ」と考えている人たちも少なからずいるわけです。〔…〕 斎藤 そうですね、そちらに利用されてしまう恐れもあるだろうと私も思います。〔…〕もしこういう発想から、雅子妃の海外移住といった提案がなされるとしたら、
それはあらかじめ廃太子のようなことも含まれた上での移住になるでしょうから、メンタルヘルス的には逆効果です。 休養と廃絶では、そのあとの待遇がぜんぜん変わってしまうわけですから。廃太子のようなことになった場合の雅子さんが感ずるであろう罪悪感や責任感を考えたときに、形式は似ていますけれども、結果はまったく異なってしまうでしょう。 ――斎藤環×原武史「精神医学」─皇室という環境 |
●「知」の現場から|原武史:編|河出書房新社|ISBN:9784309245188|2010年05月|評=○
<キャッチコピー>
最先端で活躍する論者たちの知が融合する。島薗進×原武史「宗教学」─皇室と宮内祭祀をめぐって/御厨貴×原武史「政治学」─現代政治の中の皇室、など。
<memo>
明治学院大学公開セミナーをまとめたもの。まえがきに「これだけ情報があふれ、インターネットなどを通して必要な知識を手軽に入手できる時代になっているにもかかわらず、その講師にしか語り得ない生の「知」を求める人々がいかに多いかをまざまざと思い知らされた」とある。言うまでもなくそのほとんどが高齢者である。
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