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2010.09.08

尾形誠規●美談の男――冤罪・袴田事件を裁いた元主任裁判官・熊本典道の秘密

20100908

熊本の心境は本人にしかわからない。ただ、今までの経緯を聞いていると「袴田裁判の過ちを死をもって償う」という美しい話ではないように思える。

むしろ、熊本は自分の人生そのものに絶望したのではなかろうか。将来は最高裁判事まで嘱望されていたエリートが、落ちるところまで落ち、今や住む家もろくろくない。そんな惨めな己の境遇が許せなかったのではなかろうか。

もっとも、その源に事件があったことも間違いないだろう。でなければ、自分の事務所を畳み、妻子を捨て、和田のもとを辞め、弁護士登録を抹消する絶対的な理由が見つからない。

熊本は袴田事件の呪縛に取り憑かれ、いくらもがいても抜け出せなかったのではないか。

●美談の男――冤罪・袴田事件を裁いた元主任裁判官・熊本典道の秘密|尾形誠規|鉄人社|ISBN9784904676059201006月|評=◎おすすめ

<キャッチコピー>

1966年静岡県旧清水市で一家4人が惨殺された袴田事件の元主任裁判官が、実は無罪の心証を持ちながら死刑判決文を書いたことを、2007年に公にしたのだ。心に背く判決を下した熊本典道、72才。罪の意識に苛まれながら40年以上を生きてきた。

<memo>

袴田事件関連本は多いが、本書は一審で無罪の心証を持ちながら死刑判決を行った裁判官のその後の挫折の人生を追うノンフィクション。等身大の人間臭あふれるドラマ。

門田隆将■ 裁判官が日本を滅ぼす

亀井洋志■ 司法崩壊――あなたが裁判員を強いられる理由

夏樹静子●裁判百年史ものがたり

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