村上春樹/和田誠●村上ソングズ
オキナワ娘が僕にぴたりと寄り添う。 東シナ海に夕日が落ちて、 浜辺でひと晩愛を交わすとき、 オキナワの月は大きく輝くのさ。 オキナワの連中は生き方を知っている。 一日の仕事が終わるとみんなで集まり、 安酒を飲み、愛を語らう。 古老たちはオキナワ舞踊を踊る。〔…〕 オキナワに戻るよ。 悪いけど、ベイビー、君は連れて行けない。 もう二度と帰らないかもな。〔…〕 クーダーさんにとってのオキナワは、あくまでOkinawaであって、沖縄ではなかったのだろう。それでいいではないか。〔…〕僕らの人生にはそういう憧憬がどうしても必要なのだ。 「ここではないどこか」に行けば「ここにはない何か」があるというあてのない幻想がなかったら、 僕らの人生はとかくぎすぎすしたものになってしまう。 僕だってそりゃ、かわいいオキナワ・ベイビーと寄り添って歩き、東シナ海に沈む夕日を二人で眺められたら素敵だろうなと思う。でも現実にはそううまくものごとは運ばない(運んだ例しはない)。 だからこそライ・クーダーのこんなお気楽な歌の存在意味があるのだ、ということになるのかもしれないですね。 ――「オキナワにもどるよ」 |
●村上ソングズ|村上春樹/和田誠|中央公論新社|ISBN:9784120038969|2007年12月|評=○
<キャッチコピー>
ジャズとアメリカンロックの歌詞を手ずから訳し、各曲への思い入れを語る短いエッセイを付す「村上名曲堂」ともいうべき1冊。和田誠のカラフルなイラストが華を添える。
<memo>
――うちに来ていただいて、紅茶とクッキーでもお出しして、「えーと、それがこの曲なんです」とレコードを一枚一枚ターンテーブルに載せながら(あるいはたまにコンパクト・ディスクをトレイに置きながら)説明できると理想的なのだが、(あとがき)
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