烏賀陽弘道/西岡研介●俺たち訴えられました!―― SLAPP裁判との闘い
烏賀陽弘道 発端は、二人ともが 「SLAPP訴訟(自分に不利な情報や意見が公になることを妨害するための民事訴訟)」の被害者になったことだった。 私を訴えたのは、ヒットチャートで名前の知られた「オリコン」という会社である。私が月刊誌『サイゾー』の電話取材に応えて掲載された、カギかっこのいわゆる「コメント」(30行ほど) で社会的評価を低下させられたとかで、取材し記事を書いたライターや雑誌編集部ではなく、取材先の私だけを狙い撃ちして、5000万円の損害賠償を求めてきた。〔…〕 西岡研介 07年6月、『マングローブ』という本を上梓するのだが、連載開始から単行本上梓までの1年足らずの間に、JR東労組をはじめJR総連傘下の組合員らが次々と、「記事で名誉を毀損された」として、北は北海道から南は山口県の各地方裁判所で、計50件もの訴訟を起こしてきたのだ。 ところが、である。この50件の損害賠償請求訴訟のうち47件は、私が名前も顔も知らない、従って記事には一度も登場したことがない組合員から起こされたものだった。彼らの行動が、私の連載や単行本の出版を止めること、すなわち言論活動を妨害することを目的にしたク嫌がらせ訴訟〞 であることは明らかだった。 |
●俺たち訴えられました!―― SLAPP裁判との闘い|烏賀陽(うがや)弘道/西岡研介|河出書房新社|ISBN:9784309245133|2010年03月|評=◎おすすめ
<キャッチコピー>
都合の悪い意見や批判を封じるための嫌がらせ訴訟(SLAPP)が横行している。その被告となったジャーナリストたちが、SLAPP裁判の実態や名誉毀損訴訟の問題点を検証。嫌がらせ裁判の対象は、言論界だけでなく一般にも広がっている。
<memo>
「表現の自由」と「名誉権」とのぶつかり合いをどう判断するかという確立した理論がある。それは公共・公益性、因果性、真実性、真実相当性という名誉毀損訴訟における「免責四原則」。
本書で矢田次男弁護士がわかりやすく解説する。なお、報復的、恫喝的な民事訴訟のことをSLAPPというが、Strategic Lawsuit Against Public Participationの略。アメリカでは25の州・地域にSLAPPの被害を防ぐ法律がある。
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