島森路子●ことばに出会う――島森路子インタビュー集2
** そして、なるべく単純なわかりやすい文章で、深くて複雑でわかりにくいものを書く。逆のことをやってる人はけっこういるんだけど、それが『風の歌を聴け』以来の一貫した僕のテーマであり、小説の理想なんです。 だから、単純であればあるほどいいんだけど、ただ、その単純さも、ただ単純なだけじゃ人は読まないからね。 そこにはやっぱり芸が必要で、それに関しては、僕は人を惹きつけるための文体を自分で作っていったんです。 文体というのは、麻薬と同じなんだよね。一回注射しちゃうと離れられなくなる。〔…〕 でも、いずれにしろ、文体が力を持たなくなったらダメですね。それは、一種の信用取引みたいなものだから。女の人への口説き文句みたいだけど、とにかく悪いようにはしないからという感じ。 安心感があれば読者はついてくる。それが文体なんですよ。誘惑と同じですね。小説を書くのは、非常にセクシャルな行為でもあるんです。 ――村上春樹 「物語はいつも自発的でなければならない」 |
●ことばに出会う――島森路子インタビュー集2|島森路子|天野祐吉作業室|ISBN:9784905016014|2010年07月|評=○
<キャッチコピー>
『広告批評』の創刊号から終刊号までの30年間に、天性のすぐれたインタビュアー島森路子が行ったインタビューの中から代表的なものを精選。村上春樹/鶴見俊輔/池澤夏樹/是枝裕和/深澤直人/佐藤雅彦/浦沢直樹/とんねるず/爆笑問題/ラーメンズ/横尾忠則
<memo>
プロダクトデザイナー深澤直人のことば――。
「本質的ではないけれど形はキレイ」なデザインの核。それはなんだろう?ひょっとすると、それは日本語の「張り」というものではなかろうかと。つまり、イキイキした「張りのある造形」を僕は目指していたのかと思い当たって、「張り」とは何か、真剣に考えるようになるんです。〔…〕「張り」には、「あの人はハリがある」というように精神的状態を表す場合と、「肌にハリがある」というように、物理的現象を表す場合の両方ある。
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