国分拓●ヤノマミ
* **ヤノマミにとって、産まれたばかりの子どもは人間ではなく精霊なのだという。 精霊として産まれてきた子どもは、母親に抱きあげられることによって初めて人間となる。 だから、母親は決めねばならない。精霊として産まれた子どもを人間として迎え入れるのか、それとも、精霊のまま天に返すのか。 その時、母親はただじっと子どもを見つめているだけだった。森の中で地面に転がっている我が子をじっと見つめているだけだった。 僕たちにとって、その時間はとてつもなく長い時間のように感じられた。 |
●ヤノマミ|国分拓|日本放送出版協会|ISBN:9784140814093|2010年03月|評=○
<キャッチコピー>
ヤノマミ、それは人間という意味だ。ヤノマミはアマゾン最深部で独自の文化と風習を1万年以上守り続ける民族。150日に及んだ同居生活は、打ちのめされる体験の連続。「人間」とは何か、「文明」とは何か。我々の価値観を揺るがす剥き出し生と死を綴ったルポルタージュ。
<memo>
2009年NHKで放映された「ヤノマミ~奥アマゾン原始の森に生きる~」のディレクターによるノンフィクション。帰国後、心身とも病む。
1回目の滞在(2007年11~12月)では、町に戻った時、ショックを受けた。町は余りに騒がしく、汚れていて、堕落しているように映ったのだ。
2回目の滞在(2008年1~3月)では、疲労の余り、何の感慨もなかった。
3回目の滞在時(2008年7~9月)、〔…〕、人々の関心を最も惹いたのは菅井カメラマンが歌った 「島唄」だった。翌日、何人かのヤノマミが僕たちの囲炉裏にやって来て、「もう一度歌え」と言った。〔…〕
だが、最後の滞在(2008年11~12月)では、何も言われなかった。喋れとも歌えとも言われなかった。ただ、何人かの男から「帰るならハンモックをくれ」と言われた。(本書)
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