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2010.10.27

青柳いづみこ●六本指のゴルトベルク

20101027

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ロマン・ロランは書く。

「すべては過ぎ去る。言葉や接吻や恋しい肉体の抱擁などの種々の思い出は。しかしながら、数多の一時の形象の間で、一度触れ合ってたがいに認める魂と魂との接触は、けっして消え失せるものではない」

ここがすばらしい。恋人同士がいくら抱きあっても、心まで抱きあっているとはかぎらない。肉体の接触より濃密な「魂と魂の接触」こそが、音楽の正体なのだ。

音楽を演奏するとき、聴くとき立ちのぼってくるものなのだ。音楽が、人の心にしまわれている数々の秘めた思いをひきだす力をもっているのは、まさにこの作用のためなのだ。

『ジャン・クリストフ』は音楽家を主人公にした音楽小説だが、同時に、音楽現象というものを見事に言語化した作品でもある。

――「29 あの瞬間が……」

●六本指のゴルトベルク|青柳いづみこ|岩波書店|ISBN9784000025942200902月|評=○

<キャッチコピー>

『羊たちの沈黙』のレクター博士には指が六本あった!そんなエピソードにプロのピアニストは立ち止まる。音楽にこだわると、誰もが知っている小説に新しい世界が拡がってくる。クラシックは苦手、という読者も、小説の中で紹介されている音楽を聴きたくなってくる。

<キャッチコピー>

煎じ詰めていくと、音楽家というのは言葉を信用していないんだと思う。〔…〕ひとことも言葉を発しなくても、人間にはわかりあえる瞬間があることを ――それは誰だって知っているだろうが、そういう瞬間を音楽を通していつも「体感」している種族だから。(上掲)

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