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2010.10.04

塩野七生●日本人へ――リーダー篇

20101004

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中国という国は、私が想像していた以上に政治外交小国であるということだった。

政治や外交の担当者に、人がいないというのではない。政治と外交の巧者になるには不可欠の「感覚(センス)」が、他の諸々の資質に比べればひどく劣るという意味である。これはもう民族規模の資質であって、彼らのDNAではないかと思ったりしている。〔…〕

ゆさぶられて浮足立った著名人は政治・経済・メディァと日本の各分野にわたり、何やらスズメの学校の如き喧騒を呈している。〔…〕だがこれもまた、日本が中国に負けず劣らずの政治外交小国であることの証明でもあるけれど。〔…〕

日中の友好な関係の確立は、言われるまでもないくらいに重要な課題である。しかし、重要きわまりないことゆえ何が何でも解決せねばという想いがつのりすぎると、壁に突き当っただけで絶望してしまうことになる。

しかし、迂回するという手もあるし、しばらくは足踏みしているという手もあるではないか。政冷経熟も、カネへの想い入れならば日本人以上に強い中国人が相手なのだから、けっこううまく行くのではないかと考えたりしている。

●日本人へ――リーダー篇|塩野七生|文藝春秋|ISBN9784166607525201005月発売|新書|評=○

<キャッチコピー>

なぜリスクをとるリーダーが出ないのか─危機の時代こそ歴史と向き合え!21世紀の「考えるヒント」40本。「文藝春秋」巻頭随筆がついに新書化なる。20036月号から20069月号までの約3年分。

<memo>

 尖閣列島中国漁船事件で揺れている。しかし上掲が書かれたのは無策菅政権より5代前の横暴小泉政権時代である。著者は、アメリカと中国という「はた迷惑な大国の狭間で」日本が生き抜くには、経済大国ではあっても軍事大国には一度としてなれなかったヴェネツィアの徹底した情報収集とそれを駆使しての冷徹な外交に学べという。“単なるゴンドラの都ではない”という。『海の都の物語』を読まなければ……。上掲のようなのんびりした案は気に食わないのなら、以下、同書から

現中国政府の対日本戦略(ストラテジー)は次の一事につきるのではないかと思っている。つまり、日本を押さえつけておくこと、の一事だ。そしてこれが戦略ならば、戦術には二種ある。

第一は懐柔作戦。支配される側の存在理由を認めてやりながら、支配権を行使していくやり方。

第二はこの反対で、強圧作戦。言い換えれば、圧力をかけることで支配しようとする考え方で、どの分野でもナンバーワンでないと気がすまない国家の得意とするやり方である。〔…〕

リスクにも二種あるが、その第一は、追いつめられた側が決死の想いで反発してくる場合である。〔…〕

リスクの第二は、追いつめるという力を露わにする行為自体がかもし出す、醜悪さにある。つまり、それを周辺で見ている人々の胸中に、嫌悪感を呼び起してしまうというリスクだ。

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