内田樹●街場のメディア論
* マスメディアの凋落の最大の原因は、僕はインターネットよりもむしろマスメディア自身の、マスメディアにかかわっている人たちの、端的に言えばジャーナリストの力が落ちたことにあるんじゃないかと思っています。 きびしい言い方ですけれど、ジャーナリストの知的な劣化がインターネットの出現によって顕在化してしまった。 それが新聞とテレビを中心として組織化されていたマスメディアの構造そのものを瓦解させつつある。そういうことじゃないかと思います。 なんと言っても、メディアの威信を最終的に担保するのは、それが発信する情報の 「知的な価値」です。〔…〕 固有名と、血の通った身体を持った個人の「どうしても言いたいこと」ではなく、「誰でも言いそうなこと」だけを選択的に語っているうちに、そのようなものなら存在しなくなっても誰も困らないという平明な事実に人々が気づいてしまった。そういうことではないかと思うのです。 |
●街場のメディア論|内田樹|光文社|ISBN:9784334035778|2010年08月|新書|評=○
<キャッチコピー>
テレビ視聴率の低下、新聞部数の激減、出版の不調─、未曾有の危機の原因はどこにあるのか?内田樹が贈る、マニュアルのない未来を生き抜くすべての人に必要な「知」のレッスン。神戸女学院大学の人気講義を書籍化。
<memo>
2010年8月に著者は自らのブログの「ウチダバブルの崩壊」という一文において、進行中の校正待ちゲラ6冊をしばらく「塩漬け」にする、と書いている。これはブックファーストの某店長が、「池上バブル」「茂木バブル」「勝間バブル」など出版点数を重ねる度に、「なんで、こんなにまでして出版すんの?」と悲しくなるような本を出すのでしょう、と嘆いているのを目にし、「内田バブル」と名指しされていないものの自らも当てはまると自省したもの。もっとも「なんで、こんなにまでして出版すんの?」、それを言いたいのは私の方である、と編集者のせいにしているが。
わたしは「日本辺境論」(2009.11)のAmazonカスタマレビュー欄で、「ブログをもとに本にするにしても、口述にしても、編集作業がいい加減なものがあまりにも多い。著者も編集者もゆるゆる状態である」と批判したことがある(2010.3)。著者は「内田バブル」真っ最中と思っているようだが、おそらくバブルはすでに崩壊しているという数字(売れゆき部数)が出てくるだろう。現に本書を最後に街場ものをもう手にしないとわたしは決めた。
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