三井環●検察の大罪――裏金隠しが生んだ政権との黒い癒着
* 詐欺などの前科12犯である詐欺師、渡真利を巧みに利用した。取り調べを担当した検事は、本年(平成22年)4月まで大阪地検特捜部長だった大坪弘道検事(現京都地検次席検事)である。〔…〕 渡真利が第三者に語ったところによると、大坪検事が、 「部長(三井)の首を取れば、おまえは有名人になって認められるから協力しろ。検察に恩を売っとけば、その見返りもあろうが」 と持ちかけたと言われる。 渡真利はその期待に見事に応えた。〔…〕 渡真利は、山健組の桑田組長が保釈とならないので、大坪弘道検事に文句を言ったという。大坪検事からは、 「『考える』と言ったが、『保釈する』とは言っていない。それよりヤクザに狙われているから、お前の命を守ってやる」 と言って、丸め込まれたらしい。このことは私の担当弁護人から聞いた話だから、間違いない。〔…〕 |
●検察の大罪――裏金隠しが生んだ政権との黒い癒着|三井環|講談社|ISBN:9784062164504|2010年07月|評=○
<キャッチコピー>
元・辣腕検事が人生をかけて問う、検察の闇と欺瞞。裏金告発する者をでっちあげ逮捕する、恐るべき権力濫用。自民党政権への弱みと、その後の政治事件での大暴走。究極の犯罪を犯した検察に、明日はあるのか?─検察の大罪を白日の下にさらけ出す。
<memo>
「郵政不正事件」は、証拠品のフロッピーディスク(FD)を改ざんした “大阪地検特捜部のエース”前田恒彦検事逮捕という新たな事件を生む展開を見せた。わたしの興味は、その前田検事の上司だった大坪弘道特捜部長(現・京都地検次席検事)の最高検による取り調べにある。
大阪地検特捜部といえば忘れられないのが、2002年4月に大阪高検の三井環公安部長が詐欺容疑で逮捕され、懲戒免職となった事件である。三井環部長は「法務検察の組織的な裏金づくり」問題を告発しようとテレビ朝日「ザ・スクープ」収録の3時間前、大阪地検特捜部に、過去に一度も立件されたことがないような微罪で逮捕され起訴された。
上掲のように、取り調べたのは大坪弘道検事であり、検察による口封じであると批判して冤罪を主張したのは本書の著者である三井環である。当時、わたしは検察によるメディア・コントロールの恐ろしさを「噂の真相」を通じて知った。
最高検・高検・地検幹部たちの命取りとなる裏金疑惑の口封じに尽力した大坪弘道京都地検次席検事を“功労者”として今回の証拠品改ざんに無関係とするのか、それとも新たな検察を揺るがす大事件の責任者として“トカゲの尻尾切り”されるのか、まことに興味深い。
大坪弘道京都地検次席検事は、神戸地検特別刑事部時代の2006年4月には、村岡功神戸市議汚職事件の捜査を指揮した。大坪検事はここ数年もっぱら石井一議員関連の捜査を行っていた。そのねらいはいい。そして大阪地検特捜部長に就任時、――「つぼやんは一流の割り屋だ」。かつての同僚や上司は愛称を交えてそう話す。口を閉ざす容疑者から供述を得る技術を「神業」とまで評する。「捜査はやるかやられるか、戦いである」。「どれだけ強い意志で捜査に臨むか。容疑者に負けてしっぽまいて帰ってくるようなやつは許さない」。部下への訓示も熱い。……と紹介されていた。逮捕された“大阪地検特捜部のエース”前田恒彦検事も同じように“一流の割り屋”といわれていた。そして大坪弘道京都地検次席検事は、その部下を私の“右腕”だと広言していた。
なお、2010年10月1日付け報道によれば、大坪弘道前部長と佐賀元明前副部長(現・神戸地検特別刑事部長)を犯人隠避容疑で逮捕する方針を最高検は固めたという。
大阪地検の小林敬検事正や当時の玉井英章次席検事(現・大阪高検次席検事)まで及ぶかどうかで、法務検察の本気度が分かるだろう。
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