高任和夫●罪びと
* 「ほとんど半世紀という長い期間、まったく別の道を歩んできた者同士が、 高校が一緒だったという理由だけで集まるというのは何なのだろう?」〔…〕 「同期生だから年齢がおなじなんだ。 順調に出世して、どこかの役員になっている男もいるけど、大半は定年前後だね。現に失業者になっているやつもいるし、なりかかっているやつもいる。総じて将来に対する不安を抱えている」〔…〕 「それから妻を亡くした男。それに、みなどこか病んでいる。親の介護をしているのもいる。 子供だってフリーターやニートで苦労しているのが多いんだな。すんなり就職してるのは半数ぐらいじゃないか」 ――「幸運の黒猫」 |
●罪びと|高任和夫|光文社|ISBN:9784334926250|2008年08月/文庫版ISBN:9784334748296|2010年08月|評=○
<キャッチコピー>
スナック「順子」に集う客たちの、哀歓と諦念、そして希望を描いて、読む者の胸に迫る。経済企業小説の名手が描く珠玉の市井小説集。
<memo>
老齢間近の男たちの鬱屈を切なく描く連作短編集。
「人生のある一時期、おなじ学校に所属していたからといって、親近感を抱かなければならない謂れなんかありはしないんだな。幻想だね。〔…〕会社もおなじことのような気がするな。経過した時間がちがうだけで……。いずれにせよゆっくりと風化していく。〔…〕それで、会社との関係でも根無し草になるんだな」(本書)
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