菊池清麿●評伝・古賀政男―青春よ永遠に
* 丘を越えて行こうよ 真澄の空は朗らかに 晴れて たのしいこころ 鳴るは 胸の血潮よ 讃えよ 我が青春(はる)を いざゆけ 遥か希望の丘を越えて
《丘を越えて》は、限りない青春讃美の曲である。四六小節からなる前奏の軽快さ、明るさは青春の特権である。若さと希望の表現でもある。〔…〕
「青春」と流行歌をむすびつけたことは、昭和レコード産業の創成期において革命的なことなのだ。〔…〕
近代日本音楽史のなかで、学園を装置に育んだ青春体験を楽想にしてメロディーを創作したのは、私の知るかぎりでは古賀政男のみである。
これは、滝廉太郎、山田耕筰、中山晋平、古関裕而、服部良一らの作品には見られない。なぜ古賀メロディーが豊鏡な音楽なのか、それは、己の青春体験を音楽で表現できたからである。
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●評伝・古賀政男―青春よ永遠に |菊池清麿|アテネ書房|2004年7月|ISBN: 9784871522311 |評=○
<キャッチコピー>
流行歌王・古賀政男の波乱に満ちた生涯とその音楽的世界を、激動の昭和を背景に、新たな資料と視点で描き出した記念碑的評伝。人々に愛され続ける古賀メロディーの魅力と真実に迫る。
<memo>
古賀政男(1904~1978)は、昭和期の代表的作曲家。丘を越えて(1931)酒は涙か溜息か(1931)東京ラプソディ(1936)男の純情(1936)湯の町エレジー(1948年)悲しい酒(1966)など。
菊池清麿■ 日本流行歌変遷史――歌謡曲の誕生からJ・ポップの時代へ
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コメント
菊池清麿氏の古賀政男本の二作目がもうすぐ上梓とのことです。前回とは視点が違うので楽しみです。また、既に発刊の『ツルレコード昭和流行歌物語』(人間社/樹林舎)は戦前に存在した名古屋のレコード会社に集う人間群像と名古屋モダンが記され興味深く読みました。
投稿: 風間譲二 | 2015.08.23 22:09