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2010.11.23

村田喜代子●故郷のわが家

20101123

*

一同わいわい言いながら鬼押し出しの曲がりくねった道を行きますと、向こうの角からも似たような中年や老年の一団が賑やかにやってきます。くる者くる者みんな年寄りばっかりです。〔…〕

「若い者はどこへ行ったんだ」

「馬鹿ね。この暑いときに若者が山なんかにくるわけないでしょ、体力ないのに。

青少年は下界にいるのよ。冷房の効いた薄暗い所でじっとしてるの。モグラみたいにね

と会計係が笑いました。〔…〕

そして年寄りたちは鬼押し出しに繰り出したり、グランドキャニオンに出没したり、富士山に登ったり(いつか見た新聞ニュースでは百二歳の女性が富士山頂を極めたり、九十二歳の男性が十五回目の登頂を果たしました)の賑わいです。

年寄りの高登り。

この国の老人たちの先行きに一条の光明が射すようです。

――「天登り」

●故郷のわが家|村田喜代子|新潮社|ISBN9784104041039201001月|評=○

<キャッチコピー>

65年前に生まれた家を処分するため、故郷に戻ってきた笑子さん。彼女の胸にさまざまな想いが夢にうつつに去来する。家族もなく独りで世界中を旅しつづける男。いまは亡き密かな恐竜ファンだった兄さん。ガダルカナルへの遺骨収集団に参加する村の青年。─現代における故郷喪失を描く。

<memo>

笑子さん、65歳。ミニチュアダックスフントのフジ子と暮す。連作短編集。

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