佐々木譲●廃墟に乞う
* 警察が動きだした時点では、死者の数はゼロだった。しかし、通報を受けて二時間後には、それが二となっていた。初動の失敗、と道警本部では評価された。その失敗は、つまるところ、仙道の失態だった。 この件の報告書を出してから二カ月後、仙道は薄野の居酒屋で暴れて、薄野交番の警官たちに取り押さえられた。翌日には、休職が命じられた。〔…〕 「それにしても、回復には何が必要だったんだ?」〔…〕 「やはり、時間だったのでしょう。記憶を乾かさなければならなかった。それには、時間が必要だった。 仕事を続けていたら、それはずっと生乾きのままで、何度も何度もわたしの意識の中で暴れたんです」 |
●廃墟に乞う|佐々木譲|文藝春秋|ISBN:9784163283302|2009年07月|評=○
<キャッチコピー>
北海道警察捜査一課仙道孝司ー現在、休職中。やっと回復してきた仙道に、次々とやっかいな相談事が舞い込む。持ち込まれた事件を解決していくという連作短篇集。
<memo>
休職中なので捜査も逮捕もできない立場の警察官という設定。したがって派手さはないが余韻の残る短編。直木賞受賞作だが、長編と比べれば物足りなさが残る。
| 固定リンク
コメント