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2010.11.24

吉田修一●空の冒険

20101124

*

「ケザンさん、もし宝くじで一千万円当たったら、何が欲しいですか?」と。〔…〕

彼はこう答えたのだ。

「半分はお寺に寄付します」と。

思わず、「残り半分は?」と尋ねると、「残り半分は、来世のために、やはりお寺に寄付します」。

日本にいると、この種の答えがどこか偽善めいたものに聞こえることがある。しかしブータンを二週間も旅したあとだった僕には、彼の答えが素直にすっと胸に落ちてきた。〔…〕

ある村で電気工事の話があったらしい。しかし電気を通すと、ツルが来なくなる。村人たちが出した答えは、「電気はいらない」というものだったという。

選ぶという行為は、とても贅沢なことだと思う。

そしてその選んだ何かに、その人の豊かさが現れるのだと思う。

――「ポプラジカ、ブータン」

●空の冒険|吉田修一|木楽舎|ISBN9784863240285201009月|評=△

<キャッチコピー>

映画のタイトルのイメージから紡ぎ出される美しく切ない短編小説。旅先で出会った人々や風景を見つめながら、大切な日記のように心のゆらぎや情感を綴ったエッセイ。芸術的な筆致で心の機微を描き出すショートストーリーズ。

<memo>

「ブータンという国は、決して文化的に遅れた国ではない。ほとんどの国民は英語を話すし、インターネットでCNNを普通に見ている。外界を知らずに、ああいう生活をしているのではなくて、外界を知っても尚、ああいう生活を選んでいる国なのだ」(同上)。『あの空の下で』と同様、ANA機内誌『翼の王国』掲載の短編とエッセイ。

吉田修一◆あの空の下で

吉田修一◆キャンセルされた街の案内

吉田修一■ 悪人

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