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2010.12.29

村上春樹●1Q84 book2

201012291q842

*

ある年齢を過ぎると、人生というのはものを失っていく連続的な過程に過ぎなくなってしまいます。〔…〕

肉体的な能力、希望や夢や理想、確信や意味、あるいは愛する人々、

そんなものがひとつまたひとつ、一人また一人と、あなたのもとから消え去っていきます。

別れを告げて立ち去ったり、あるいはある日ただふっと予告もなく消滅したりします。〔…〕

これから少しずつ、人生のそういう黄昏れた領域に脚を踏み入れようとしておられる。それが、ああ、つまりは年をとっていくということです。

1Q84 book2|村上春樹|新潮社|ISBN9784103534235200905月|評=◎おすすめ

<キャッチコピー>

「こうであったかもしれない」過去が、その暗い鏡に浮かび上がらせるのは、「そうではなかったかもしれない」現在の姿だ。

<memo>

*

「ついでに豊胸手術もしてもらった方がいいかもしれませんね」

老婦人は肯いた。「それは良い考えかもしれません。もちろん人目を欺くためにということですが」

「冗談です」と青豆は言って、それから表情を和らげた。「あまり自慢できたものではありませんが、私としては胸はこのままでかまいません。軽くて持ち運びが楽ですし、それに今さら違うサイズの下着に買い換えるのも面倒ですから

「それくらい好きなだけ買ってあげます」

**

「チェーホフがこう言っている」とタマルもゆっくり立ちあがりながら言った。「物語の中に拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはならない、と」

「どういう意味?」

タマルは青豆の正面に向き合うように立って言った。彼の方がほんの数センチだけ背が高かった。「物語の中に、必然性のない小道具は持ち出すなということだよ。もしそこに拳銃が出てくれば、それは話のどこかで発射される必要がある。無駄な装飾をそぎ落とした小説を書くことをチェーホフは好んだ」

***

「僕は誰かを嫌ったり、憎んだり、恨んだりして生きていくことに疲れたんです。誰をも愛せないで生きていくことにも疲れました。僕には一人の友達もいない。ただの一人もです。そしてなによりも、自分自身を愛することすらできない。なぜ自分自身を愛することができないのか? それは他者を愛することができないからです。人は誰かを愛することによって、そして誰かから愛されることによって、それらの行為を通して自分自身を愛する方法を知るのです

****

「良い質問だ。しかしそのふたつを見分けるのは至難の業だ。ほら、古い唄の文句にもあるだろう。Without your love.it’s a honkey-tonk parade」」、男はメロディーを小さく口ずさんだ。「君の愛がなければ、それはただの安物芝居に過ぎない。この唄は知っているかな?」

「『イッツ・オンリー・ア・ペーパームーン』」

「そう、1984年も184年も、原理的には同じ成り立ちのものだ。君が世界を信じなければ、またそこに愛がなければ、すべてはまがい物に過ぎない。どちらの世界にあっても、どのような世界にあっても、仮説と事実とを隔てる線はおおかたの場合目には映らない。その線は心の目で見るしかない」

*****

「世間のたいがいの人々は、実証可能な真実など求めてはいない。真実というのはおおかたの場合、あなたが言ったように、強い痛みを伴うものだ。そしてほとんどの人間は痛みを伴った真実なんぞ求めてはいない。人々が必要としているのは、自分の存在を少しでも意味深く感じさせてくれるような、美しく心地良いお話なんだ。だからこそ宗教が成立する

村上春樹●1Q84 book1

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