« 大村彦次郎●荷風 百閒 夏彦がいた――昭和の文人あの日この日 | トップページ | 丸谷才一●あいさつは一仕事 »

2010.12.06

永田浩三●NHK、鉄の沈黙はだれのために――番組改変事件10年目の告白

20101206nhk

*

エレベーターを乗り継ぎ、20階で降りた。ふかふかのじゅうたんが足早の靴音を消していく。遠藤主幹は秘書に挨拶したあと、すぐ総局長の部屋に入れてくれた。

そこには、松尾さん[放送総局長]と伊東さん[番組制作局長]、野島さん[総合企画室担当局長]がいた。三人とも立ってこちらを見ていた。

虚をつかれたようすだった。ばつの悪い沈黙が流れた。

「吉岡ちゃん[教養番組部長]には、言っておいたんだけど。なにか?」

松尾さんが言った。怒鳴られるかと思っていたが、そんなことはなかった。

「はい、聞きました。でもなぜ、いちばん大事な慰安婦の証言や、加害兵士の証言をこの期におよんで切るんですか。

やっていいことと悪いことがあります。お願いします。考え直してください。そんなことをしたら、NHKが深手を負いかねません。考え直していただけませんか」

NHK、鉄の沈黙はだれのために――番組改変事件10年目の告白|永田浩三|柏書房|ISBN9784760138418201007月|評=◎おすすめ

<キャッチコピー>

「本書は、2001130日に放送されたNHK教育テレビ『ETV2001』シリーズ「戦争をどう裁くか」の第2回「問われる戦時性暴力」の内容が、国会議員らの圧力によって放送前に改変された事件について、当時NHKの番組担当プロデューサーであったわたしの体験と、その思いをつづったものである」(本書)。

<memo>

「問われる戦時性暴力」のテーマは慰安婦問題。戦時中、アジアで慰安婦とされた女性たちの専厳を回復するため、2000年各国から国際法の専門家が集まり、慰安婦制度の責任者を裁く「女性国際戦犯法廷」が開かれた。番組はその民間法廷を扱ったが、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の中川昭一代表、安倍普三氏事務局長(官房副長官)から放送前に圧力があり、番組が改編されたという事件。これを報じた朝日新聞とNHKの間でその真偽をめぐって全面対決となった。

 わたしは本書をビジネスマンものノンフィクションとして読んだ。第1、上司は組織を守るといいながら実は自己保身のため平気で嘘をつく。第2NHKも朝日も堂々と左遷人事を行う。第3、その他の社員はいつも遠巻きに見ているだけである。本書を出すのに10年という月日が必要だったようだが、筆致が感傷的なのが気になる。

|

« 大村彦次郎●荷風 百閒 夏彦がいた――昭和の文人あの日この日 | トップページ | 丸谷才一●あいさつは一仕事 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 永田浩三●NHK、鉄の沈黙はだれのために――番組改変事件10年目の告白:

« 大村彦次郎●荷風 百閒 夏彦がいた――昭和の文人あの日この日 | トップページ | 丸谷才一●あいさつは一仕事 »