川村晃生/浅見和彦●壊れゆく景観――消えてゆく日本の名所
* 自然景観や歴史的景観を壊すか残すかという問題は、最終的にはその時代を生きる人々の価値観に帰因するのであろう。 往昔の日本人は、それを残して子孫に伝えることを使命としてきた。 それはなぜかと言えば、豊かな自然景観は豊富な生産物を私たちに約束してくれるからであり、美しい歴史的景観は私たちの心に慰籍(いしゃ)をもたらしてくれるからだ。 たとえば瀬戸内海の漁獲高が減っているように、コンクリートで固められた汚れた海からは、私たちは多くの海の恵みを期待することができないのである。 景観の衰退は、生命力の衰微でもあることに気付かねばならないだろう。 |
●壊れゆく景観――消えてゆく日本の名所|川村晃生/浅見和彦|慶応義塾大学出版会|ISBN:9784766413083|2006年11月|評=○
<キャッチコピー>
在りし日の名勝の美しさを、古典に謳われた多数の歌や写真、図版とともに紹介しつつ、現在の惨憺たる乱開発の状況を重ね合わせ、理念なき環境行政のあり方に警鐘を鳴らす。
<memo>
平安時代の和歌文学の川村晃生、鎌倉室町時代の散文文学の浅見和彦が、日本文学の立場から破壊された景観(海浜/山野/湖水と川/都市と生活)を考える。
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