本多勝一●本多勝一 逝き去りし人々への想い
* 新聞に出る俺の記事はもちろん、俺の文章の出た雑誌や本を、父はあますところなく読んでいた。単行本の場合はほとんどが新聞などに以前出て読んだものなのに、やはり丁寧に目を通していた。 俺の記事の最も熱心な読者は、たぶん父だったかもしれない。
従って記事を書くときも、父にわかるようにという気持ちが、文章の基本のひとつとして働いていることがよくあった。 それはもちろん質を下げるという類のものではなく、表現方法の問題である。 雑誌などに少々ラディカルなことを書くと、父は「あんな過激なことを書いていいのか」と心配し、母は「なにしろ親が生きとるうちは、世間に顔向けできんようなこたアしてくれるなよ」と言うのが常であった。〔…〕 俺はべつに「過激」になったわけでは全くなく、こっちは変らないのに世間がむしろある方向に「過激」になりつつあるんだ、などといって安心させようとしていた。 ――「本多勝第――父の通夜」 |
●本多勝一 逝き去りし人々への想い|本多勝一|講談社|ISBN:9784062164030|2010年10月|評=○
<キャッチコピー>
日本のジャーナリズム、政治、文化、国際問題、社会運動を支えた巨人たち、身のまわりの愛しき人々への「鎮魂歌」。著者が共に生き、共に闘った人々の生き様、死に様を綴った記念碑的作品。
<memo>
親、兄弟、師、友人などへの追悼文集。
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