村松友視◎ギターとたくあん――堀威夫流不良の粋脈
* 年をこなすごとの仕事の内容や、対人関係によってゆっくりと躯から力が抜けていったせいで、生まれつきの正直な性格や気質が、素直に表面に出るようになったということであるのかもしれない。 たくあんを漬けはじめたのが1974年すなわち42歳、42年ぶりであらためてギターとよりをもどしたのが2002年すなわち70歳のとき…… 個人としての日常生活のベースに、たくあんとギターがかさなるようになって、今年で8年目ということになる。この8年間の意味合いを、私はあえて着目したいと思った。 現在の堀威夫には、不良の粋脈の奥におだやかな水脈が流れ、何とも男らしいやわらかさがあらわれているのだ。 そこに伝わってくるのは、スイング・ウエスト全盛時代のバンドマンの華、ホリプロ・ファウンダーの悠々たる貫禄、そして何か複雑きわまりない屈託をからめた男の、不思議で謎めいた不良の香りだった。 |
◎ギターとたくあん――堀威夫流不良の粋脈|村松友視|集英社|ISBN:9784087814439|2010年10月|評=△
<キャッチコピー>
綺羅星の如きスターを育んだ激動の50年!そのホリプロ創業者・堀威夫の正負の戸板返しの人生を、村松友視がみずからの生に照らし合わせて描き、逃げ水のように謎に満ちた男の素顔に迫る。
<memo>
堀威夫には本書にも多く引用されている『いつだって青春』(1992、増補文庫版は2005)がある。その自伝以降を含めた堀の人生をギターとたくあん漬けの特技をモチーフに描いている。ホリプロ50周年のお祝いパーティの席で出席者にこの本が配られたのだそうだ。 その種の本である。
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