上野千鶴子◎ひとりの午後に
* 若いときからつづいている友人たちも、ただ昔からの知り合いだというだけではない。 歳月の節目ふしめでそのひとらしい選択を重ね、人生の歩みをたどってきた軌跡に、尊敬と共感を持っているからこそ、友情がつづいた。 そうでないひととは、自然と疎遠になっている。「同窓生でした」と近づいてくるひとほど、苦手なものはない。学校が同じでもその後の人生に接点がなかったからこそ、何十年も会わずにきたのだ、いまさら同窓会など、行く気にもなれない。 「若いときの友だちが一生の友。大事にしなさいね」というアドバイスを聞くと、 そうか、オトナになってからお友だちがつくれなかったかわいそうなひとなのね、とよけいなことまで思ってしまう。友人はいつでも、どこでも、つくれる、あなたがその気なら、と言ってあげたくなる。 ――「年齢」 |
◎ひとりの午後に|上野千鶴子|日本放送出版協会|ISBN:9784140814192|2010年04月|評=○
<キャッチコピー>
知られざる思いを紡いだ自伝的エッセイ。世間知らずだった子ども時代から、孤独だった青春期、社会人となってからの日々、いまは亡き人々への思いまで。「けんかの達人」と呼ばれた社会学者が、その知られざる内面としなやかな暮らしを綴ったおとなのためのエッセイ集。
<memo>
還暦になり肩の力をすこしぬいた私的エッセイ集。上掲は、次のように続く。「歳をとってから培った友情では、そのひとの過去に思いを馳せる。どんな経験や苦労がこのひとの現在をかたちづくってきたのだろう、と想像するのが楽しい。男なら、ほかの女たちにさまざまに揉まれてなめされた効果を愛でる楽しみもある。〔…〕男を見れば、過去の女との関係の質はすぐに見えてくる」(本書)。
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