北村薫/宮部みゆき◎とっておき名短篇
* 4 夜勤の警備員をしながら、彼はいくつもの古典悲劇を暗唱したが、この何十年かのあいだ、口に出す言葉といえば、「こんばんは」「お疲れさまでした」など、いくつかの挨拶だけだった。〔…〕 19 同僚たちと花見の席で大騒ぎをしている最中にふと、 自分が前世でこの樹のしたへ 誰かを殺して埋めたことを思い出した。〔…〕 35 演奏会の直前に、オーケストラの団員たちが楽器ケースを開けると、それぞれのケー スの大きさに見合った子供の木乃伊が入っている。〔…〕 89 老いた船乗りが漂着した孤島で見出した苔だらけの塊は、故国に放置してあった母親の墓の墓石だった。〔…〕 100 若いころ婚約していた女のもとへ長い手紙を書き送るのが男の五十年来の日課であり、ぶ厚い封書を開封せずに焼却するのが五十年来の女の日課であった。 ――飯田茂実「一文物語集」より |
◎とっておき名短篇|北村薫/宮部みゆき|筑摩書房|ISBN:9784480427922|2011年01月|文庫|評=○
<キャッチコピー>
「しかし、よく書いたよね、こんなものを…」と北村薫に言わしめた、とっておきの名短篇!目利き二人を唸らせた短篇が勢揃い。
<memo>
北村・宮部による名短篇アンソロジーの4冊目。戸板康二、深沢七郎、松本清張、大岡昇平などの短篇を収録。上掲は掌編小説? 詩?
| 固定リンク
コメント