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2011.03.23

リービ英雄◎我的中国

20110323

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軍事博物館を出ようとしたとき、せっかくだから人々が間断なく出入りしている、飛行機とミサイルのあるあの展示場を見てから帰ろう、と思いたった。

一階への長い階段をまたおりて、マルクスとエンゲルスとレーニンとスターリンの肖像画を通り過ぎ、毛沢東のリムジンの奥にある部屋に入った。

戦闘機とミサイルと戦車のまわりに子供たちが群がり、部屋の中は騒々しかった。もう十分だと思って出ようと振り返ったとき、いま入ってきた部屋の入口の壁の上方にかかげられた巨大なキノコ雲の写真が目に入った。大陸の西域の砂漠から立ちのぼる原爆実験の写真だとすぐに分かった。

あの百年の歴史を二度と繰り返さないための、究極の「抗」ずる武器は、これだ、というメッセージが十分に伝わってきた。

歴史に無関心そうで飛行機に夢中の、おびただしい子供の歓声を聞きながら、足を早めて出口に向かった。

──「軍事博物館にて」

◎我的中国│リービ英雄│岩波書店│ISBN9784000026475200401月/文庫版ISBN9784006021849201102月│評価=○

<キャッチコピー>

中国の路地裏を歩き、庶民と言葉を交わす。広大な風景の回廊に佇み、歴史に堆積された想念との出会いから至高の私小説的紀行文学が紡ぎ出される。あの中国は、中国人ではない「我」にとって何であるのか。非西洋へ越境したワールド・フィクションの書き手が綴った等身大の中国。

<memo>

帯に「私小説的紀行文学」とあり、あとがきに中国大陸の旅をノンフィクションとして綴った、とある。私小説的なロードノベル星野博美のノンフィクション『愚か者、中国を行く』を思い出した。

──今ふり返ると、見聞が想像もできなかったほど可能になっただけでなく、そのタイミングもよかった。2008年のオリンピックを経過した今の中国大陸と違って、2000年になる前には場所によっては「共産主義」の名残も、「鎖国」状態から一歩だけはみ出たようなアジア独自の風物も、奇跡的なほど自由に体験することができた。(あとがき)

星野博美■ 愚か者、中国をゆく

星野博美★転がる香港に苔は生えない

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