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2011.03.04

星野智幸◎俺俺

20110304_2

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「あの若造が現れてから、このところ、毎日思うんだ。

仕事から帰ったら、今度は俺がおふくろにあなたなんか知りません、うちの子はこの人です、って言われて、あの若造が俺の部屋に現れたりするんじゃないか。それでもおかしくないんじゃないかって。

だって、年齢とか細かい容貌とか別にしたら、あいつは俺と何の違いもないんだからね。

入れ替わったって親には同じだろうし、入れ替わったこともわからないだろうし、俺が本物だって証拠はないんだよ。

それで、俺って本当にこのうちにずっと住んできたのかって考えつめたら、だんだんぼんやりしてきてね。全然自信ないんだ」

◎俺俺│星野智幸│新潮社│ISBN9784104372034201006月│評価=○

<キャッチコピー>

マクドナルで隣り合わせた男の携帯電話を手に入れてしまった俺は、なりゆきでオレオレ詐欺をしてしまった。そして俺は、気付いたら別の俺になっていた。上司も俺だし母親も俺、俺でない俺、俺ではない俺、俺たち俺俺。俺でありすぎてもう何が何だかわからない。増殖していく俺に耐えきれず右往左往する俺同士はやがて─。孤独と絶望に満ちたこの時代に、人間が信頼し合うとはどういうことか、読む者に問いかける問題作。

<memo>

導入部はスリリングだが、俺俺が増殖し始めてからは緊張感がとぎれ、退屈なストーリーに。上掲に続く「仕事と同じ。異動があっても、担当が俺じゃなく別の人間に代わっても、業務さえ回っていれば日常は続く」というフレーズがあり、底が割れてしまう。

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