広瀬 隆◎新版 危険な話──チェルノブイリと日本の運命
* こうして私たちは、大事故のときにはどこへも逃げられず、政府が出してくれる安全宣言を耳にし、それを内心で疑いながら、食料は危険と知りながらそれを口に入れます。 腹が減れば、人間は何でも食べます。子どもを飢え死にさせるわけにゆかない。目の前には食べ物がある。危険と知りつつ食卓に並べる。ひと口食べてみる。すると意外なことに、体には何の異状も起こらない。大丈夫ではないか。なんだ、危ないという話は嘘だったのではないか。 こうして食べ、やがて悲しい未来が待ち受け、病室のなかでもがき苦しみながら倒れてゆく。 皆さんは今、これを空想の物語のようにして聞いていらっしゃいます。ところがこれこそ、いまソ連を中心にヨーロッパで実際に起こりつつある出来事なのです。 わが国では、なにが原因となって、このような最後の日を迎えるのか。〔…〕 第一が緊急炉心冷却装置、第二が格納容器、第三が材料劣化と出力異常、第四が地震です。 こわくて聞きたくない人は、外へ出ていてください。 ──第3章 日本に大事故が起こる日 |
◎新版 危険な話──チェルノブイリと日本の運命│広瀬 隆│新潮社│ISBN: 9784101132310│1989年4月│文庫│評価=○
<キャッチコピー>
1986年4月、ソ連のチェルノブイリ原子力発電所で重大な事故が発生した。その結果、放出された大量の〈死の灰〉は世界的規模で深刻な環境汚染を引き起こしつつある。今後その影響はどのように現われていくのか? 日本の原発に事故の危険性はないのか? 原発の建設を推進する原子力産業の正体とはそもそも何なのか?
<memo>
2011.3.11の震災・津波・原発事故から17日が経過した。被災地、被災者に向けて全国の人々や自治体から、救援物資、義捐金を送るとともに、消防・ボランティア等の人的支援が行われている。そしてなによりも被災者たちへのいたわりやはげましの気持ちが全国から伝えられている。しかし菅直人首相は自らは一所懸命、命がけでと言葉を並べたてた国民へのメッセージを読み上げるが、政府対被災地・被災者にしか目が向かず、被災地以外の国民や自治体に対し、首相としてまた被災者に代わって、感謝の言葉を発したことは一度もない。このような首相(そしてそれに気づかない内閣)をもった不幸を思わないわけにいかない。
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