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2011.03.22

上原隆◎胸の中にて鳴る音あり

20110322

*

宮内は十年前に自分の会社を倒産させた。離婚して妻子と別れ、自己破産を宣告した。

ひとりになり、住みこみの仕事についた。製缶工場、自動車工場、冷凍倉庫、スーパー』-ケットなど、どれも二年続かなかった。

「やった者じゃないとわかんないけど、使い捨てのような仕事だからさ、もうイヤって気持ちになっちゃうのよ」〔…〕

五十を過ぎた頃から住みこみの仕事に雇ってもらえなくなった。仕方なく路上生活をした。〔…〕

「大晦日ですね」私がいう。「普通だと、テレビを見ながら家族団欒をしてるんじゃないですか、ネット喫茶にひとりで泊まってると思うと辛くないですか

「そんな気分にはならないよ」宮内が私の顔を見て笑う。「暖かいところで寝られるなんて幸せだよ」

──「大晦日の夜と元日の朝」

◎胸の中にて鳴る音あり│上原隆│文藝春秋│ISBN9784163696300200710月/文庫版:ISBN978416780119920110110日│評価=○

<キャッチコピー>

介護地獄に苦しむ元キックボクサー、淡々と「不倫のメリット」について語る女性が漏らした最後の一言、ネット喫茶でたったひとり新年を迎える男、文学賞に落選し続ける43歳…。普通の人々の普通の生のなかの瞬間をあるがままに描く21篇。どんな小説よりも鮮烈に現代を映すコラム・ノンフィクション。

<memo>

呼吸(いき)すれば、

胸の中(うち)にて鳴る音あり。

凩よりもさびしきその音!(石川啄木)

 

上原隆●にじんだ星をかぞえて

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