リービ英雄◎我的日本語
* 中国は個人に土地所有権がない。ある町の5千人を追い出そうと思ったら、通知一つで済む。それが中国の力だ。共産党の下で資本主義をやると、巨大な力になっていく。
きっと、もう一度、立ち退かされた文化の後を、書かなければいけないのだろう。〔…〕
近代化に近代文学は負けるに決まっている。日本でも、70年代にそれが起こった。80年代、ソウル・オリンピックの韓国でも、それがあった。中国は、まだもう少しもつと思ったら、そうではなかった。
3年前、25、6回目の中国で、ある若い人に会った。彼は、 「マンションを買ってそれから車を買う。それが人生の目的です」と言った。
25 回も、苦労して中国に渡ったのは、この科白を聞くためだったのか。
中国が、経済大国として成功した途端に、書くべき最後の領域が消えるかもしれない。
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◎我的日本語│リービ英雄│筑摩書房│ISBN:9784480015037│2010年10月│評価=○
<キャッチコピー>
日本語の書き言葉には、緊張感がある。島国の感性を記すために大陸由来の漢字を受け入れ、かな文字を生み出し、独自の書き言葉をつくってきた。英語を母語としながら、周辺言語にすぎない日本語で創作する作家のまなざしに寄り添い、日本語の魅力をさぐる。
<memo>
本書は“自伝的日本語論”なのだが、『我的中国』を読んだ者としては、どうしても上掲のフレーズを引用したくなった。
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