上原善広◎異形の日本人
* 日本でもトップ級の実力をもつある学生選手は、溝口の練習方法とその量に驚き、思わずこう訊いたという。 「溝口さん、私の大学4年間はいったいなんだったんでしょう」 溝口は、笑わずにこう答えている。 「お前の4年間か。わしの2時間じゃ」 こうして、溝口はようやく中京大学で「こわい日本記録保持者のおっさん」として、存在を知られることになる。それまでは完全に忘れ去られた存在だった。いや、今でも一般的にはそうだろう。〔…〕 日本陸上界は、1990年代から肩の故障で不遇な競技生活を送っていた溝口を黙殺した。世界レベルの技術を持つ溝口だったが、その存在自体があまりに無頼に過ぎた。 ──「第3章 溝口のやり──最後の無頼派アスリート」 |
◎異形の日本人│上原善広│新潮社│ISBN:9784106103872│2010年09月│新書│評価=△
<キャッチコピー>
虐げられても、貧しくとも、偏見に屈せず、たくましく生きた人たちがいた。哀しい宿命のターザン姉妹、解放同盟に徹底的に弾圧された漫画家平田弘史、パチプロで生活しながら唯我独尊を貫く元日本代表のアスリート溝口和洋、難病を患いながらもワイセツ裁判を闘った女性、媚態と過激な技で勝負する孤独なストリッパー…社会はなぜ彼らを排除したがるのか?マスメディアが伝えようとしない日本人の生涯を、大宅賞作家が鮮烈に描く。
<memo>
医師のわいせつ行為を訴える筋萎縮症の女性がなぜ“異形”なのか。
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