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2011.04.05

河田恵昭◎津波災害──減災社会を築く

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1937年から47年にかけて小学校の国語の教科書に使われた『稲むらの火』の記述の問題点はそこにある。文章自体が非常に津波をリアルに表現した素晴らしいものであった。ために、そこに書かれていることがすべて真実であるかのような錯覚を生みだしてしまった。

津波が来襲する様子を引き波で始まるように表現したため、読者は「いつも津波は引き波で始まる」ものと誤解してしまった。

この教科書で勉強した人びとは、このように誤解したため、津波警報が出ると海に津波を見に行くという行為が、現在も後を絶たない。

また、それが伝承され、若い人までもそれを信じてしまっている。2003年の三陸南地震の後に実施された気仙沼市の市民の調査では、津波の第一波が引き波で始まっていると信じている市民は何と95パーセントを超えていることがわかった。

◎津波災害──減災社会を築く│河田恵昭│岩波書店│ISBN9784004312864201012月│新書│評価=△

<キャッチコピー>

いまだ記憶に新しいスマトラ沖地震津波。巨大地震発生帯に位置する日本列島も、同様の津波に襲われる可能性が十分にある。来たるべき大津波に、どう備えるか。重要なのは、被害をいかに最小限におさえるかという「減災」の視点だ。災害研究の第一人者である著者が、津波減災社会の構築へ向けた具体的施策を示す。

<memo>

本書は東日本大震災の3か月前に出た本である。「私が読者にとくに伝えたいことは、『避難すれば助かる』という事実である。そのためには、まず津波に関する知識の絶対量を増やすことが先決である」(まえがき)。上掲の教科書批判の後、「国語の教科書の教材で、防災をテーマとした本格的なものは過去64年にわたって皆無であった。そこで、2011年度から使用される小学五年生の国語の検定教科書で『百年後のふるさとを守る』と題した筆者の教材が採用されることになった」と自画自賛している他方、こういう記述もある。「三陸沿岸は『宿命的な』津波常襲地帯である」としたうえで、「津波防波堤のある大船渡、久慈(工事中)や釜石を除いて、世界屈指の津波危険地域であると言える」。大船渡や釜石の市民がこれを読めば、自分のところは大丈夫と信じるだろう。しかし大船渡市は住宅約3650棟が全壊、死者・行方不明者は500名を超え、釜石市は死者・行方不明者1300名を超えている。著者は産経新聞(2011.3.19)のインタビューに「生死を分けたのは何だったのか。今後、無事だった人に話を聞く必要がある」とぬけぬけと答えている。ちなみに著者は、阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター長である。

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