筒井康隆◎漂流──本から本へ
* 最初に手をつけたのがデュマ『モンテ・クリスト伯』二巻である。 子供向きにリライトされた『巌窟王』の原作だということは知っていたので、面白いに違いないという確信があったからだ。 読みはじめてぼくはまず、児童向きの本で読まなくてほんとによかったと思った。「神は細部に宿る」なんて諺はまだ知らなかったが、その諺はまさに小説のためにあったのだ。子供向きの本ではストーリイを追うあまり細部の描写や瑣末なエピソードは省かれてしまう。 しかし小説の真の面白さはそういう部分にこそあり、実は以前、同じデュマの『三銃士』を児童もので読み、ちっとも面白くなかった経験がある。 人物がチャカチャカと動くだけの紙芝居的な展開にすぐ嫌気がさし、以後、その種のものは読まなくなった。これは今でも正しかったと思っている。 |
◎漂流──本から本へ│筒井康隆│朝日新聞出版│ISBN:9784022508331│2011年01月│評価=○
<キャッチコピー>
のらくろ+乱歩+西遊記+ウェルズ+イプセン+クリスティ+フロイド+セリーヌ+ヘミングウェイ+カント+ハメット+三島+川端+マルケス+大江+ハイデガー+α=作家生活50年、その生涯に触れた書物の経験をめぐる書評的自伝の決定版。
<memo>
読書遍歴によって筒井康隆はこう作られたという自伝。
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