« 和田昌親◎ブラジルの流儀──なぜ「21世紀の主役」なのか | トップページ | 団鬼六◎死んでたまるか »

2011.05.06

今野勉◎鴎外の恋人──120年後の真実

20110506

*

鴎外は、自分の子供たちすべてにドイツ風の名前をつけることを最初から決めていた。長男に於菟(オト)と名づけ、長女に茉莉(マリ)と名づけたあと、次女にある名前をつけることにこだわった。

次女の証言。〔…〕

「父は長い間杏奴(アンヌ)と云ふ名前にするつもりで楽しみにしてゐて、

私が生れると母の反対を恐れ、一人でこっそり区役所へ行って届出をしてしまったと云ふから、余程好きな名前であったに違ひない」

これだけなら、偶然ということもあるが、鴎外は、一年おいて明治44年(1911) に生まれた三男に「類(ルイ)」と名づけたのである。

「杏奴」と「類」。それは、アンナ・ベルタ・ルイーゼの、アンナとルイーゼを意識したものであることはまちがいない。

鴎外は、一方で「エリーゼ」にこだわり、他方で「アンナ」と「ルイーゼ」にこだわっていた。二人が同一人物であることの大きな証拠であるとともに「エリーゼ」は、恋人同士の時期、二人の間で使われていた名前であったことの証しでもある。

◎鴎外の恋人──120年後の真実│今野勉NHK出版│ISBN9784140814420201011月│評価=◎おすすめ

<キャッチコピー>

文豪・森鴎外の処女作にして最高傑作『舞姫』。主人公が打ち捨てた美少女エリスのモデルの実像については謎が多い。NHKハイビジョン特集で放送された同名ドキュメント番組の底本となる、書き下ろしノンフィクション。

<memo>

明治21(1888)、留学時代の鴎外のドイツ人女性の恋人が、帰国した鴎外を追って日本にやってきた。恋人の名前も素性も明らかでない。著者は、鴎外の遺品として残っていたモノグラムの型金(かたがね)に出あう。モノグラムとは、人名のアルファベットの頭文字を組み合わせて図案化したもの。鴎外の本名森林太郎のイニシャル、MとRを透かし彫りにしたその型金(金属板)に、恋人の名前が隠し文字のように潜んでいることがわかった。そこからモノグラムに秘ゆられた謎の追求をたどるノンフィクション・ミステリー。本書と同時にNHKでそのドキュメントが放送された。120年前の雰囲気を伝える美しい映像だった。本書は活字版として、鴎外の漢詩などを多く引用しながら、鴎外の恋を追う。

今野勉★テレビの青春

|

« 和田昌親◎ブラジルの流儀──なぜ「21世紀の主役」なのか | トップページ | 団鬼六◎死んでたまるか »

コメント

補足

正式名は「エリーゼ・マリー・カロリーネ・ヴィーゲルト」で鴎外の恋人となっています。

投稿: 騒ぐ血 | 2013.08.31 07:05

小生岩手県民です
本日(H25.8.30)付け「岩手日報」の記事によれば「エリーゼ.ヴィーゲルト」の写真が見つかったということですが、どうお思いになりますか。ベルリン在住の作家の六草(ろくそう)いちかさんが探し出したそうです。

投稿: 騒ぐ血 | 2013.08.30 21:17

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 今野勉◎鴎外の恋人──120年後の真実:

« 和田昌親◎ブラジルの流儀──なぜ「21世紀の主役」なのか | トップページ | 団鬼六◎死んでたまるか »