真山仁◎虚像(メディア)の砦
* 所属する会社が消えれば、自分の居場所も消える。 お笑いだジャーナリズムだと言っても、それは会社あっての事なんだ。そんな当たり前の事を今、黒岩は噛み締めていた。 今まで、心のどこかに自分たちは特別な仕事をしているという驕りがあった。確かに視聴率を上げるという至上命題はあった。 しかし、自分をサラリーマンだと感じた事はほとんどなかった。楽しい事をやってお金がもらえるおいしすぎる商売。〔…〕 俺たちは今、我が身の驕りのツケを払わされているだけなのかも知れない。いや、もっと言えば、大衆を踊らせた罰を受けているのかも知れない。 テレビの向こうの視聴者を小馬鹿にしていた俺たちだって、彼らと大差ないほどの愚か者だった事を思い知らされているんだ。 |
◎虚像(メディア)の砦│真山仁│角川書店│ISBN:9784048736251│2005年06月/文庫版:講談社│ISBN:9784062759250│2007年12月│評価=◎おすすめ
<memo>
中東で日本人が誘拐された。その情報をいち早く得た、民放PTBディレクター・風見は、他局に先んじて放送しようと動き出すが、予想外の抵抗を受ける。一方、バラエティ番組の敏腕プロデューサー・黒岩は、次第に視聴率に縛られ、自分を見失っていった。二人の苦悩と葛藤を通して、巨大メディアの内実を暴く。
<memo>
2004年イラク戦争時、武装勢力がイラクに入国している日本人を誘拐・拘束し、自衛隊の撤退などを求めた事件。慰安婦を扱ったがNHK番組に、安倍普三氏官房副長官から放送前に圧力があり、番組が改編されたという事件。……などをモデルにテレビ界の内幕を描いた作品。テレビ界の内幕ゆえに映画化もドラマ化もされないだろう。
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