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2011.05.13

真山仁◎ベイジン

20110513

*

「冗談じゃない。

我々が原子炉の暴走を停められなければ、

世界中の原発が停まるかもしれません

鄧の懐中電灯が田嶋の顔に向けられた。田嶋の真意を探りたかったのだろう。

「原発はね、全て繋がっているんです。北京五輪の合い言葉であるワン・ワールド、ワン・ドリームそのものなんです。

世界最大のAPWR(改良型加圧水型原子炉)が、ここで成功すれば、世界の原発が一歩前進する。だが事故が起きれば、全ての原発が停まり、徹底した安全確認を強いられる」〔…〕

「だからね、鄧さん。紅陽核電が安全に停まれば、原発に託した我々の希望は、ギリギリのところで踏み止まれるんです」

◎ベイジン(上・下)│真山仁│東洋経済新報社│ISBN97844920614739784492061480200807月/文庫版:幻冬舎│201004月│◎おすすめ

<キャッチコピー>

200888日午後8時。北京五輪開幕と同時に世界最大の原発“紅陽核電”の運転がスタート…。五輪、原発、そして中国をテーマに、絶望と諦観を希望に変える闘いが始まる。中国の暗部と現実を描き、時代の激流と人間の生き様を描く著者の真髄が結実した大傑作。

<memo>

本書は福島原発事故の3年前に書かれた。中国大連近くに原発を建設する話をメインに据えたもの。菅直人首相に読ませたいフレーズを以下紹介。

──救出活動の準備を始めた作業員を見て大町は続けた。「彼らが求めているのは、何事が起きても揺るぎなく構える皇帝のような統率者です。みだりに現場に出て来るような皇帝は、彼らを失望させるだけです

──「岡部さんは、一番やってはいけないことをやっちゃったんです」〔…〕「建設事務所長以下、幹部連中を、何度も部下の面前で罵倒したんです

──彼は、被災者救済の大義を掲げて、ヘリコプターで現地に乗り込んできた。しかも地元テレビ局を引き連れ、彼の“英雄的な行動”の一部始終を映させた。〔…〕一方で、被災者の救済措置は、口約束ばかりで一向に埒があかなかった。

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