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2011.05.17

吉川潮◎芝居の神様──島田正吾・新国劇一代

20110517

*

再びひとり芝居に戻る。

「おう、角さん。あいつはたった一人で定徳のところへ乗り込むつもりだぜ。だが、生きて帰ってくりやあ、あいつも立派な男になれらあ」

幕切れで上手に引っ込む直前、ふと思い立ち、素に戻った。

「これで刑務所の場面は終わりでございますが、この時の辰巳の飛車角は、五分刈りの坊主頭に筒っぽの着流し、黒木綿の兵児帯をダラリと結び、小ちゃな風呂敷包みを手にぶら下げた下駄履き姿でございました。ニヒルな、それはいい飛車角でございました

万感の思いを込めて言うと、両の瞼をぴったり閉じて、在りし日の辰巳の姿を思い浮かべた。

辰巳は心の中に生きている。

大向こうから「大島田!」という掛け声と共に再び「辰巳!」と声が掛かった。

辰巳と二人で演じたひとり芝居であった。

◎芝居の神様──島田正吾・新国劇一代│吉川潮│新潮社│ISBN9784104118052

200712月/文庫版:筑摩書房ISBN9784480428226201104月│評価=○

<キャッチコピー>

戦前から戦後にかけて大衆娯楽の殿堂であった新国劇の看板役者、島田正吾。96歳まで舞台に立ち続け、伝説のひとり芝居「白野弁十郎」を演じ続けたその生涯を、師匠澤田正二郎、盟友辰巳柳太郎、後輩緒形拳、座付き作者池波正太郎らとの逸話、名台詞と共に辿る。

<memo>

わたしは島田・知の人、辰巳・情のひとというイメージを持っていたが、新国劇の“男”の舞台を見たことがない。劇場はいまや9割が女性客、後継者に恵まれていたとしても、新国劇は続かなかっただろう。澤田正二郎の七訓のうちの一つに「端役に生きよ、しからば大役に生きん」。

吉川潮■浮かれ三亀松

吉川潮■流行歌-西條八十物語

吉川潮●戦後落語史

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