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2011.06.09

北村薫◎いとま申して──『童話』の人びと

20110609

*

人生の中の、ひとつの時代が終わるような気がした。しかし、それが、新しい段階への一歩となる。

父は、その日、日記にこう記した。

牡丹がふっくらと蕾を持ち、たたまれた紅の花びらが、ほんの少し顔を出してゐる。離れの中庭の小暗きあたりに紫の豆の花咲く。莢はまだ見えない。

僕は一生、創作家たり得ないか知れない。だが而し、かうして日記帳を約十冊書き伝へた。約千二三百頁位あるかと思ふ。

これは僕の記録である。僕の遺書である。

◎いとま申して──『童話』の人びと│北村薫│文藝春秋│ISBN9784163299204201102月│評価=○

<キャッチコピー>

大正末期、旧制中学に通う少年は創作への夢を抱き、児童文学の現場で活躍する若者たちと親交を持つ。雑誌「童話」には、金子みすゞ、淀川長治と並んで父の名が記されていた。創作と投稿に夢を追う昭和の青春。父の遺した日記が語る“時代”の物語。

<memo>

著者の父・演彦 (のぶひこ)は童話作家をめざした。大正の終わりから昭和の初めにかけて十代だった父が残した日記を元に父とその仲間の青春を描く。タイトルの「いとま申して」とは、父の辞世。「『いとま申して、さらば』と皈(かえ)り行く冬の日の、竹田奴かな」から。「説経節の調べに乗り、端役として舞台を去って行く滑稽な人形。父は、自らの姿をそれになぞらえた」とある。

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