西村雄一郎◎ぶれない男 熊井啓
* 最後に、明子夫人が締めくくりの挨拶をした。 「熊井は42歳、厄年の時に死線を彷徨いまして、辛くもそれを抜け出して、『忍ぶ川』を作りました」 その時から、すでに死の覚悟ができていたかのように、奥様は気丈だった。〔…〕 「企画途中のものがあったことを残念に思うという声もお聞きしますが、彼は一つの作品が終わると、次の映画のことを考えておりました。 そのために、ある意味では、どこで切っても残念無念、またある意味では、どこで終わっても満足でございました」 |
◎ぶれない男 熊井啓│西村雄一郎│新潮社│ISBN:9784103039334│2010年02月│評価=○
<キャッチコピー>
『帝銀事件 死刑囚』『黒部の太陽』『忍ぶ川』『サンダカン八番娼館 望郷』『千利休 本覺坊遺文』『日本の黒い夏 冤罪』……、抗う人間の姿をひたすら追った最後の映画人。その全生涯と全作品を、親交厚かった評論家が、愛情込めて綴った決定版評伝。
<memo>
熊井啓は「私はいわゆる『映像主義者』に対して、『音響主義者』と居直ってシナリオを書き、映画化していた時期がある」と書いている。本書では熊井映画の音楽、とりわけ伊福部昭の音響設計について興味深かった。
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