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2011.06.22

三浦哲郎◎おふくろの夜回り

20110622

*

ちかごろ、我が家の寝所に、ときどき幽霊が出没する。〔…〕

妻の話によると、幽霊はいずれも高齢者らしく、性状穏和で、動きも緩慢である。〔…〕

一体、これらは何者の幽霊だろう。妻にも初めのうちは見当がつかなかったが、あるとき、もしやと思い当った。

幽霊が出た翌朝の朝刊の死亡欄に、いまから三十五年も前、駒込の駅前の酒を飲ませる店で働いていた二十の自分に、熱心に言い寄ったことのある大学教授で著名な国文学者の記事が出ていたからである。

妻が働いていた店は、本郷の方から都電できて、駒込で国電に乗り換える前に一杯やるには恰好の位置にあり、都電の沿線にある大学や研究所に通う人たちが常連であった。そのころの野心家たちも、ちかごろはいよいよ寿命の尽きる時期にさしかかっているのだろう。

幽霊がきた翌朝、妻は早起きして、朝刊の死亡欄をひっそりと見ている。

──「幽霊」

◎おふくろの夜回り│三浦哲郎│文藝春秋│ISBN9784163727509201006月│評価=△

<キャッチコピー>

故郷に思いを馳せ、亡き父母を追慕し、日々の生活を静かに見つめる。待望の最新随筆集。

<memo>

「オール讀物」の巻末コラム「おしまいのページで」に初登場したのは昭和50年。以来35年、年2篇の割で書きつづけられてきた48本の短文をまとめたもの。

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