大森実◎エンピツ一本(上)
* 私は、吉田退陣のニュースを聞いた後、なぜか表現のしようのない寒々とした気特にとらわれて、落葉散るワシントンの街路をむなしくほっつき歩いていた。 「注意しなければならないことは、政治家が嘘つきだということだぞ、彼らは党利党欲だけでなく、私利私欲のために嘘もつくし、黒を白といって、恥じることを知らない人間だ」 これは、大阪という地方都市の社会部しか知らなかった私にとって、恐ろしい発見であったが、ここで私は、自分のジャーナリスト戦陣訓の中に、もう一条を追加することを決めた。 「俺がテレックスで毎日打電する記事の一つ一つが歴史の一ページになることを忘れるな」 ──第六章 戦後政治の「虚」と「実」 |
◎エンピツ一本(上)│大森実│講談社│ISBN:9784062058261│1992年04月│評価=◎おすすめ
<キャッチコピー>
国際ジャーナリストの激動の50年。新聞記者の枠を越え、日本人の枠を越えて世界で活躍した男の、「人生」と「魂」の記録。
<memo>
「大宅壮一が、私のことを評して「大森実は天才だ」(『第三の引金』の序文)と書いたが、〔…〕多分、大宅は毎日新聞を辞めたばかりの私に、慰めと激励を与えるつもりで、あのような「賞状」を書いたのに違いない」と大森は書いている。わたしは大森はまちがいなくその着想、即応、速筆などジャーナリストとして天才だと思う。
| 固定リンク
コメント