青山潤◎うなドン──南の楽園にょろり旅
* アフリカの草原で草を食むゾウや、水底を漁る水鳥、ゆったりとした淵に身を潜め、流れてくる昆虫を待つ魚たちが、近所付き合いや将来への不安にストレスを感じ、 「あぁ、こんな生活もうイヤ! どこか誰も知らない土地へ行ってみたい」 などと思うものだろうか。 しかし、よく考えてみれば、それは個体数が増えすぎて競争が激しくなったり、環境が悪化したりすることと同義である。 現在の状況に不満を感じた生物が、そこから脱出しようとすることは極めて妥当な行動であろう。 すなわち、動物の旅の原初の形は、こうした脱出行動によるものである。 というのが、全く有名ではないが、塚本教授が最近になって提唱しはじめた「脱出理論」である。 ここから先は、眉にたっぷりと唾をつけてからお楽しみいただきたいのだが、仮に、旅に出ることが生物にとって普遍的に必要な行動だとすれば、それは長い進化の歴史の中で、遺伝子に組み込まれてゆくだろう。 すると、生物が何らかの不都合に遭遇したとき、この遺伝子のスイッチが入り、散歩やちょっとそこまで程度の「移動」とは異なる「旅」に出ることになるのである。 |
◎うなドン──南の楽園にょろり旅│青山潤│講談社│ISBN:9784062168014│2011年02月│評価=△
<キャッチコピー>
帰ってきたウナギ・バカたち!ウナギの研究で世界的に知られる東大の研究チームが、今回足を踏み入れたのはタヒチ島だった。南の楽園はたちまちサバイバル島に!抱腹絶倒の冒険記。
<memo>
柳の下にいつもドジョウならぬウナギはいない。前作『アフリカにょろり旅』(2007)を傑作ノンフィクション100選に選び、本書は待望の2作目だったが……。
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