和田芳恵◎筑摩書房の三十年 1940―1970
* 筑摩書房という新しい出版社が出来て、金に糸目をつけず、売れようが売れまいがお構いなしに、一級品を出版するというので、出版界の驚異の的になった。 しかし、この道で苦労してきた人たちは、このやり方で、はたして、どこまで続くだろうと危ぶんでもいたらしい。 小山書店の顧問格だった速水敬二が、当時の筑摩書房を、次のように語った。 「筑摩書房が出来たとき、みんな驚いた。いろんな企画をやるので、どこでも驚異の的だったわけですね。ところが、いかにも素人くさいでしょう。やること、なすことね。〔…〕 そのうち酒がまわってくると、古田晃を知らねえか、日本一の本屋になるんだと啖呵を切るんですよ。〔…〕 古田は、まったくの素人でしょう。おかしくてね。〔…〕しかし、素人は、いい面を持っているので脅威の的だったですけれどもね。 古田自身に聞いたら、処女出版の三冊を原価計算したら、全部売れても、だいぶ赤字だったという」 |
◎筑摩書房の三十年 1940―1970│和田芳恵│筑摩書房│ISBN:9784480015150│2011年03月│評価=○
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古田晁と臼井吉見。松本中学以来の同級生ふたりが、文字通り心血を注いで守り育てた筑摩書房。その根の部分に迫った、作家・和田芳恵渾身の作、復刻版。
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1970年に、社史として上梓。非売品のため一般読者の目に触れなかったが、和田芳恵の筆になる本書は社史の「名著」として語り継がれてきた。たんたんとした叙述による小説を読んでいるよう。
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